低濃度アトロピン点眼(小児の近視抑制治療)
当院では小児期における近視の進行抑制を目的とした点眼治療を行っております。
治療の目的
日本では2人に1人が近視と言われています。先進国において近視は視力障害の主要な原因であり、近視は主に小児期に進行します。また、高度な近視の場合は、網膜剥離、緑内障、黄斑変性などのリスクが高いと言われています。
近視とは、眼球が楕円形に伸びて、遠くを見るときにピントが網膜より前に結んでしまい像がぼやける状態です。一度伸びた眼軸は戻すことができません。そのため、近視抑制治療では眼軸長の伸びを抑えることを目的としています。
アトロピン配合点眼薬には眼軸の伸展を抑制する効果があると言われ、近視の進行を遅らせることが臨床試験で証明されています。 日本で認可されている1%アトロピン点眼は近視抑制を強力に抑制しますが、中止した場合の戻りが大きく、副作用(散瞳による眩しさや目の調節機能の低下による読み書きの困難、動悸、充血、アレルギー症状など)が強いため、小児の近視抑制には不向きとされています。今回、用いる低濃度のアトロピン(0.01%)点眼は副作用も少なく、近視の進行抑制効果が20から30%程度あって、中止した場合の戻りも少ないことが分かっています。
治療の対象
- 12歳以下の学童
- 中程度(-6D)以下の近視の方
- 2年以上の治療、指示された定期健診(おおよそ3ヶ月毎)が可能な方
治療に使う点眼薬
- 低濃度アトロピン点眼 ※0.01%、0.025%アトロピン点眼5ml
(製品名:マイオピン)日本では未承認の薬となります - 点眼方法 両眼1日1回点眼 (1ヶ月に1本使い切り)
※オルソケラトロジー用レンズとの併用可能。
マイオピンを点眼してから5分以上開けてレンズを装用してください。
治療の流れと費用
治療の流れ
- ① 適応検査(完全予約制(月曜午後)
- 検査・診療・治療内容の説明を行い、適応があれば点眼薬を処方します。
- ② 1週間後
- 検査(視力など)と診察を行います
- 点眼薬使用後の問題がなければ点眼薬を追加処方します。
- 点眼薬による異常が認められた場合は治療を中止する場合があります。
- ③ 1か月後
- 検査(視力など)と診察を行います
- 点眼使用に問題が無いか確認します。問題なければ追加処方します。
- ④ 定期検査
- 3ヶ月毎に定期検査を行います。
- 治療は2年以上継続していただくことをお勧めいたします。
費用
- ① 低用量アトロピン点眼による近視抑制治療のみの場合
適応検査1回5500円(税込)検査・診察費用1回1500円(税込)
点眼1本0.01%:3,500円、0.025%:4,000円(税込) - ② オルソケラトロジー併用の場合
オルソケラトロジーの定期検査費用
点眼1本0.01%: 3,500 円、0.025%:4,000円(税込)
- 本治療は自由診療です。(健康保険や子ども医療費助成制度は適応されません)
- 保険適応外にて全額自己負担になり、別途消費税が加算されます。
- 本治療に関係のない疾患の検査、治療には別途保険診療として費用が掛かります。
- この治療は近視の進行を抑制するものであり、近視がまったく進行しないわけではありません。
また、視力を回復する治療ではありません。 - 治療効果には個人差があります。